General

変な話

2009年6月5日

本来は日記ブログに書くべき内容なのだが、少し思うところあってこちらに書いてみる。

先日、NHKでニュースを見ていたときのこと。高齢者ドライバーの話になっていた。Webでの当該ニュースへのリンクを見つけられないのだが、大元はたぶんこれ。実際にニュースとして聞いたものを要約すると次のような感じであった。

愛媛県では高齢者率が高く、25%の人が高齢者である。高齢者ドライバーによる交通事故も年々増加し、去年は事故全体の16%が高齢者ドライバーによるものであった。増加する高齢者ドライバーの事故に関して、愛媛県でどのような対応をしているのか、追った。(以下略)

さっと聞き流すともっともな内容であるが、良く考えるとこれは少し変な話である。全体で25%の方が高齢者であるのに対し、事故を起こした高齢者ドライバーの率が16%であるというのは、高齢者ドライバーが優秀であることを示しているのではないか?

愛媛県の人口14万人のうち、3万五千人が高齢者、高齢者以外は10万五千人である。仮に交通事故の総件数が100だと仮定すると、高齢者ドライバーによる事故が16件、高齢者でないドライバーによる事故が84件。これらの値から、高齢者ではおよそ2200人に一人が事故を起こし、高齢者以外ではおよそ1300人に一人が事故を起こしていることになる。このデータを見る限り、高齢者ドライバーは優秀ドライバーなのだ。

下のグラフを見ていただきたい。

ランダムな100個の点

これは、100個の点をランダムに描画したものである(X軸・Y軸共に、0から1までの間)。次に、下の4つのグラフを見てみよう。

一部だけを表示

4つのグラフはいずれも、最初のグラフの中から、いくつかの点だけをピックアップして描画したものである。それぞれ、どのデータをピックアップしたかが異なる。これらの4つのグラフのうち一つだけ見せられれば、以下のような異なる4つの結論らしきものを得ることができるはずだ。

1)常に一定以上の値である。
2)常に一定以下の値である。
3)値は、右に行くほど高くなる。
4)値は、右に行くほど低くなる。

これらの4つの結論がすべて正しくないことは、最初の図を見れば明らかである。

さて、愛媛の高齢者ドライバーの話に戻って、何が問題なのか考えてみる。可能性は、3つあるだろう。

1)高齢者ドライバーは、通常のドライバーよりも安全な運転をする。
2)高齢者ドライバーの安全性は、通常のドライバーと変わらない。
3)高齢者ドライバーより、通常のドライバーの方が、安全性が高い。

最初の計算(25%と16%の比較の話)が正しいとすると、1)の結論になる。この場合、政府や自治体の対応が明らかに間違っているということになる。一方、『高齢者ドライバー対策が必要』という結論が正しい、つまり3)の結論の場合、最初の計算のどこが間違っていたのだろうか?それは簡単なことで、必要なデータが示されていないだけのことである。25%の高齢者の全員が免許を持っているわけではないだろうし、免許を持っていたとしても、車を運転する頻度が高齢者の場合は低いことは十分考えられる。つまり、16%という値と比較しないといけないのは、現に車を運転している人のうち何%が高齢の方々かという値なのだ。

データの一部だけを見るとおかしな結論になってしまうのではないかという例をもう一つ。毎日新聞の社説から一部抜粋してみよう。

社説:警察官不祥事 確かに「世も末だな」
警察庁によると、昨年中に全国で懲戒処分を受けた警察職員は、懲戒免職30人、停職44人など252人で、一昨年より51人減った。最多の569人が処分された02年に比べれば半減しているが、処分理由の悪質化が気がかりだ。昨年も窃盗、詐欺、横領などによる処分者が71人を数えるなど明らかな違法行為に手を染めるケースが目立つ。犯罪を取り締まる警察官が、自ら罪を犯すとは言語道断だ。市民の信頼への裏切りだが、人並み以上に正義感や使命感に燃える若者が巡査を拝命していることに照らせば、警察組織に何らかの欠陥があるように思われてならない。

たしかに、この記事だけ読むと問題点は指摘できそうである。ところが、である。Webから取得できる範囲で、次のようにデータを取ってみた。

・警察官の総数は、およそ25万人。(現在、日本の【警察官・刑事】の人数は何人か教えて下さい。公式のものでお願いします。
・京都市の2006年度の懲戒免職の数は20人。(京都市が4職員を懲戒免職 給食食材水増し発注など本年度計20人に
・京都市の平成19年の職員数はおよそ1万6千人。([団体区分別の職員数の状況]

なぜ京都市を扱ったのかについてはまったく意味はなく、単に一年間の懲戒免職の人数を調べることができたのが京都市だけであったということなので、その辺はご容赦願いたい。

さて、これらのデータから、警察官の1年間の懲戒免職の数はおよそ8000人に一人であり、京都市の場合はおよそ800人に一人であることが分かる。このデータからは、警察官は一般公務員よりも10倍も犯罪率が低いという結論になる。実際のところ、警察官の犯罪率が一般の公務員よりも多いのか、少ないのか、同じくらいなのかは、ここで挙げたデータだけで結論することは無理だと思われる。

さらにもう一つ。少し話はそれるけれど、相撲の話題。

米学者が調べた千秋楽7勝7敗(世界一小さい新聞) gataro:より抜粋。

レヴィット博士は、手順を踏んで、次のように説明する。

まず、本場所千秋楽に、7勝7敗の力士が
8勝6敗の力士に当たった取組数100番の統計をとった。

・7勝7敗の力士の8勝6敗力士に対する期待勝率  48.7%
・7勝7敗の力士の8勝6敗力士に対する実際の勝率 79.6%

・7勝7敗の力士の9勝5敗力士に対する期待勝率  47.2%
・7勝7敗の力士の9勝5敗力士に対する実際の勝率 73.4%

7勝7敗の力士は、なんと8勝6敗力士に対して、
10番中ほとんど8番も勝っていることがわかる。
また7勝7敗の力士の9勝5敗力士に、驚くほどの善戦をしている。


これはね、相撲が好きなので力士の肩を持ちたいんですが力士の肩を持わけじゃないんですが、力士も人間だということを忘れてると思うんですよ。つまり、7勝7敗の力士にとって千秋楽の一番には昇進か脱落かがかかっているわけで、14日目までに勝ち越した8勝6敗力士のほっと一安心の心境とまったく違う。しかも、多くの場合、8勝6敗力士もかつては7勝7敗で千秋楽を迎えたこともあったわけで、対戦相手の気持ちを考えると、無意識のうちに手加減してしまうなんてことも十分ある。レヴィット博士にはぜひ、千秋楽の力士の頭に脳波測定装置か何かをつけてデータを取って欲しいものです(笑)。

たぶん、世間の人たちが思うよりも八百長の数は少なくて(もちろん、その数がゼロの可能性も含めて)、八百長のように見えるのは実際は、いわゆる無気力相撲の類だと思う。先場所の把瑠都・千代大海戦とか。あの相撲で千代大海を責めるのはかわいそうなのであって、ほとんどの人は把瑠都にとって千代大海が天敵中の天敵であることを知らないだけなのだ(特に、怪我をしている把瑠都にとって)。この人は以前にも一度、千代大海相手に、土俵から逃げ出したかのように見える(少なくとも私の目にはそう見える)相撲を取ったことがある。把瑠都も好きな力士の一人なので、来場所から心機一転がんばってほしいのだけれど。

最後に、この記事はあくまでデータの取り方によって結論が変わってしまうことに関して扱っただけなので、警察官の資質の問題とか高齢者ドライバーの安全性などに関して何らかの結論を出そうとしているわけではないことを、確認させていただきたい。

コメント

コメントはありません

コメント送信