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メチル水銀の話

2009年8月24日

枯れ木の記事を書いた直後なのだが、記事をひとつ追加したい。

ここのところ、太地町でのイルカ漁が話題になっている。"dolphin japan"の検索語で、Google動画ででてきたムービーを見てみたが、かわいそうであるのは確か。

ただ、この映像で猟師さんがイルカにナイフを入れている映像があるが、良く見るとイルカがなるべく早く楽になるような裁き方をしているシーンもある。イルカ漁が、彼らにとって生活の一部であろうことは、容易に想像できる。映画のシーンがどんなものであるかは分からないのでなんともいえないが、監督としては自分の表現したいことに沿って使う映像を選択できるので、その辺は考慮すべきだろう。

同様に、動画検索サイトで、"cosmetics test animal"、"abuse cow"、"abuse pig united-states"、"abuse chicken"、"slaughter kangaroo"などの検索語を使えば、さまざまな衝撃映像が出てくる。これは、イルカだけの問題ではあるまい。

ただ、このあたりはこの映画の監督も承知しているらしく、上で取り上げた映画の紹介ページには次のように書かれている。
ルイ監督の意見もわかるが、イルカやクジラは知能の高い動物だから保護し、鶏や牛や豚などの家畜類は殺してもOKというのは、都合のいい人間のエゴではないのだろうか? 「その点については、僕も同感さ。確かに動物福祉問題で、僕らのようなOPS(海洋保護協会)の者が、議論で勝つことは難しいと思う。オーストラリアでは、カンガルーを殺して肉にしていたのを見たし、アメリカで家畜が殺されているのも見たことがある。一方の動物だけを生かし、ほかの動物を殺すのは、確かに矛盾がある。しかし、僕らが主張したいのは、このイルカの肉が人体に悪影響を及ぼすということさ。もし日本の人たちが、魚を主食としている哺乳(ほにゅう)類に、大量の水銀が含まれていることを知ったら、食べないだろう? さらにイルカの肉がクジラ肉として売られているとしたら、それにも気を付けるだろう? 最終的には、人に害をもたらす危険性があるということを考えなければいけないんだ」と安全性を第一に考えることを強調していた。

さて、この記事を書くことにしたのは、実はこの『水銀』のことについて読んだからである。この監督が、本当に水銀中毒のことを取り上げてドキュメンタリーにしたかったのかどうかはさて置き、メチル水銀による害について、少し調べてみた。

すると、案の定『水銀イルカにご用心』とか、『鯨やイルカ肉の水銀より、輸入牛肉のホルモンのほうが問題である』とか、正反対の意見があるようだ。

私なりに咀嚼してまとめてみると、次のようになる。

1)海洋中には、低濃度ながらメチル水銀(有機水銀)が存在する。
2)すべての魚類がこれに汚染しうるが、いわゆる生体濃縮によって、鯨・イルカ・マグロなどの生態系のトップに居る魚介類では、水銀濃度が高い。
3)なかでもイルカは、水銀濃度がかなり高いとされている。なので、危険という主張がなされる。
4)ただし、水銀と共に、その毒性を緩和するセレンが同時に含まれていることがほとんどであり、水銀・セレン複合体はほとんど毒性がないので問題ないという主張がなされる。

私自身、おそらく今までイルカの肉を食したことはないし、今後あったとしても、稀にだであろう。なので、イルカの肉が汚染されているかどうかは、私にとってはどうでもよい。ただ、マグロも危険となると話は別。

さて、となると、メチル水銀・セレン複合体が本当に無毒なのかどうか、あるいは、気にしなければならないほど魚肉中の水銀に危険があるのか、調べてみなければなるまい。

ここでは、2つの論文を紹介する(論文といっても、レビューだけれども)。ひとつは、日本の方が出しているレビューで、Modification of mercury toxicity by selenium: practical importance?というもの。もしこのリンク先で原本が読めるのであれば、ざっと見ていただきたい。ここでは、有機水銀と無機水銀とでセレンとの結合の様式が異なること、両方のケースについてセレンの効果が報告されていること、有機水銀・セレン相互作用に関する研究は無機水銀・セレン相互作用に比べると報告が少ないこと、有機水銀が体内中で無機水銀に変化するケースがあることなどが書かれている。いずれにせよ、それほど単純な話ではないらしい。

もうひとつの論文はアメリカからで、Overview of modifiers of methylmercury neurotoxicity: chemicals, nutrients, and the social environment.というもの。こちらでは、セレンが有機水銀の害を中和したケース、しなかったケースの両方について書いている。また、有機水銀の毒性を緩和するものとして、セレンだけではなく、omega-3と呼ばれる、DHA・EPA・ALAの3つの脂肪酸が挙げられているらしい。これらは魚類に多く含まれる、不飽和脂肪酸である。

これらの論文を読んで私なりに出した結論は、『規制値を超えているから危険』とか『毒性を緩和するものと結合しているので安全』とかの簡単なものにはなりえなかった。

まあ、マグロをおいしくいただいている分には大丈夫だろうと。

あぁ、うまい寿司を食いたいなぁ。

コメント

ミルク (2009年9月13日 18:00:44)

ワン

ミルク2 (2009年9月13日 18:02:10)

もっと詳しいこと画知りたいわん

ミルク2 (2009年9月13日 18:03:19)

もっと詳しいことが知りたい   わん

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